このブログ初の小説投稿です。不定期にやっていきますわ。
今日の空は快晴だ。雲1つない青空。そして見てるだけで吸い込まれて上に落ちるような感覚にふとした瞬間に襲われるほどの青空。
僕はそんな空を眺めるのが大好きだ。こういう日の夜は星と月がよく見えて、天体観測にはもってこいの空模様だ。そんなことを考えていると急に声が聞こえてきてその考えは遮られた。
「やぁ、オーディネイターボーイ。また空観察かい?」
「御狐、急に話しかけるのはやめてくれって毎日言ってるだろ……」
「仕方ないだろう?何回か話しかけても君は文字通り上の空だったからな」
僕の考えを遮ったのは幼馴染の御狐陽子だ。珍しい苗字だが本人はそんなことはつゆ知らずと言った様子のふわりとした人だ。彼女が僕に興味を持つ理由も含めて掴み所がなさすぎるんだ。本当に困りものだ。
そして僕の名前は斑鳩弥。なんの取り柄もないただの高校一年生。何故だか御狐からはオーディネイターと呼ばれるがよくわからないのさ。僕は監査官という柄じゃないし、何より人を見てはいないからこの呼び名は的外れと抗議したい。それに発音が違うし。でも彼女はいつも
「カッコいいだろう?そういうのが男の子は好き、と本で読んだものでね」
と受け流されてしまう。
だけどそんな彼女も僕の日常の欠かせない要素となっていることは間違いない。空を眺め、幼馴染からからかわれ、ただ歩く。それだけでも僕はとっても楽しいんだ。何故だかそう思えてくる。
「それで少年、今日の空模様はどうだい?」
御狐は朝の日課のように僕にその日の空模様を訪ねてくる。こんな日はとっても良い模様だ。絵画にもなる。と答えたかったが……
「なんだろう。とっても良い模様なのに……何故だかそれと同時に嫌な模様だよ」
僕らが見上げた空は、満点の青さの向こうにどことない暗さを秘めていたんだ。
オーディネイターボーイ
そのあと僕と御狐はいつも通りの時間に教室についていつも通りクラスメート達の談笑を聞いていた。内容はとりとめなく「ここのタピオカは美味しい」とか「アイツがウザい」とか「誰とヤリたいか」みたいな時々お下劣な会話も聞こえてくるが男の子ってのはこういう話題が好きだというのは昔から分かっている。
「なぁ少年よ」
「どうした御狐」
「私を抱きたいと思ったことはあるのかい?」
ただそのたびに御狐がこういう風に変なことを聞いてくる。それだけは本当に勘弁してほしい
「毎度毎度どんなリアクションすればいいか困るからやめてくれよ御狐……」
「ふふっ、友をからかいたくなるのは良くある衝動だろう?」
「そうかもしれないけど異性間だとやらないだろ!?」
僕は御狐はいい奴だと思っている。成績も優秀で社交性もそれなりにある。しかもかなりのお金持ち……こういうと非の打ち所がないと思うがいかんせん性格が癖だらけで僕を除くとあまり彼女の友人はいない。だからこそこういう絡み方になるのは理解できるけど流石に勘弁してほしいと思うことがある
「おっと、そろそろ授業が始まるねぇ。少年、さっきの答え考えといてね〜」
「あっ!おい!……もう行きやがった」
御狐とは同じクラスだが席はかなり遠い。しかし彼女は登校後や休み時間にしょっちゅう僕の席に来る。しかもはぐらかすようなタイミングで授業前の鐘がなるから問い正そうにもいちいち間が出来るから本当に勘弁してほしい……
授業もすべて終わり、僕は帰宅準備をしていた。今日からしばらくは午前中で終わるから午後は遊び放題だ。そんなことを考えていたらいち早く準備を終わらせた御狐が話しかけてきた。
「少年、今日はどこで食べていくんだい?」
「んー、どうするかな。家は何にも用意してねえしコンビニで買うか外で食べるかだなぁ」
「そうか、なら私の作った新型の非常食でも……」
「却下。この前のやつは味が最悪だったろうが。腹は膨れたけど」
「むー、残念だな」
御狐はかなり筋のいい発明家でもある。ただ努力の方向性が明後日を向いていることを除けば、だが。しかし今まで作ってきたのは大なり小なり何故か極限状況で役に立つようなものばかりだ。それがどうにも気になっているがいざ聞こうとしても毎度毎度はぐらかさせる……
「なぁ、いつも思うんだけどなんでお前の発明ってあそこまで用途限られてんだ?」
「前にも言ったろ?いつかこの世界にはナニカが起きる。だからこそそのための準備は前もってしておかないとってさ」
そう、御狐はいつもこうやってはぐらかしてくる。世界の危機みたいな話はもうお伽話なんだ。だから俺含めて誰も信じちゃいない。でもそのお伽話を信じて地下に巨大なシェルターを作ったり、世界のことを記録し続ける超高性能コンピュータを作っているあたり本当に発明に関しては天才というものだと思ってはいる
「まぁ今は世界の危機より腹の危機、だろ?何を食べるか決めようじゃないか」
「そうやってすぐにはぐらかす……まぁ今日はラーメンでも食べてくか?」
「それはいいかもねぇ。私も久しぶりに麺を食べたい気分だしね」
「よっし、決まりだ!」
「なら早速行くとしようじゃないか!」
そうして僕たちが昼ご飯を食べに行こうと教室を出た時、僕の足元でカランと何か音がした。
「……ん?なんだこれ?」
どうやら何かを蹴ったらしい。何を蹴ったか確認しようと拾ったら、それは急に光を放ち……
「うわっ!?なんだ!?」
「どうした、少年?早く行こう。ご飯は待っていてくれても座席は待っていてはくれない……って!?何があった!?弥!?」
「わ、わかんねぇ……落ちてたナニカを拾ったら急に光って……」
「光って……そのブレスレットになった、と?」
「へ?」
光ったものが何かを確認しようとしたがどこにもなく探していたら御狐がその答えを出してくれていた。そう、光ったものは、いつの間にか僕の右の手首に紫色の輝きを放つブレスレットが付いていた……
「な、な……なんだこれぇぇ!?!?」
御狐に手を貸してもらい立ち上がった僕は右腕にくっついてきたブレスレットを眺めた。
機械のようでいてそうでないように見える銀色のナニカに紫色に輝く宝石が埋められている。さっき光ったのは多分この部分なんだろう。落ち着いてみると見ていて言葉を失うような美しさを感じてしまい、それがなんだか怖くなって僕は目をそらした。
「なんなんだろうな、これ……」
「さぁ?私にも皆目見当がつかないよ。というか少年の方は大丈夫なのかい?」
「あぁ、僕は大丈夫だよ。でも御狐が僕の名前を呼ぶのは久しぶりじゃないか?」
「さぁて、なんのことやら私にはわからないよ?」
「とぼけやがって……」
御狐は普段は少年少年と呼んでくるくせに僕が危ない目にあうと名前で呼んでくる。多分心配してくれてることなんだろうけど、僕にはそれがよくわからなかった。
「それで?それは外せそうかい?」
「んー、あんまり外そうって気が起きないんだ。何故か」
「本当かい?男の子ってのはこういうのをカッコつけの道具に使うからそれじゃないのかい?」
「んなわけあるか!」
御狐に言ったことは嘘も下心もなしにただこれを外したら何かいけない気がするという直感的な理由だった。
それにこれは僕が持っていなければいけないという気がしてならない……と考えていたら
グーッと僕らの腹の虫が鳴った
「……とりあえずご飯食べに行こうか?ブレスレットのことは家で考えればいいし第一、私はお腹ペコペコさ」
「そうだな……そうするか」
こうして僕らは遅めになってしまったが昼ご飯を食べるためにラーメン屋に向かうことにした……
2人で昼を食べた後僕達は家に帰り、ブレスレットを調べようとした。御狐は発明家としてかなりの才能を持っているし何より……
「私の発明した『どんな材質でも検知マシーン』の実験としてこれ以上のものはないんじゃないか少年!!!!」
と興奮して肩を掴まれてユサユサと振られてしまっては断るものも断れなかったからだ……
「それで、御狐さんや。なんかわかりそう?」
「うーーーーーーーーむ…………」
そして僕はコンビニとかのレジでよく使われてるバーコードスキャナーにゲーム機のモニターをくっつけたような機械を使ってうんうん唸ってる御狐に何か進展があったか聞いてみた
「いやー、私はこれならどんな材質でもなんでも分かるようにつくってみたんだけどね。本当に何にも引っかからなくて困ってるのさ……」
「……どう言うこと?」
「見れば分かることさ、ほれ」
そう言って御狐は手に持ったマシンの画面を見せてきた。
「えーっとなになに……?この材質に該当するデータはありません……だってぇ!?」
画面にデカデカと写っていたのはその文字だけだった。他にもUnknownだとか様々な数字が見えたが一般学生の俺にはよくわからなかったけど……
「そう!なーんにもわからない!しかもこれ外そうとしてもかなり硬いロックがかかってるから普通には外せないし、しかも材質が分からないから対処のしようがない!詰みってやつだね!ハハハッ!」
「ハハハッ!じゃあないよ!寝るときもこれ付けてないといけないのか!?」
「でも付けてる少年には悪影響はないと思うけどね」
「?それってどう言う……」
そう言うと御狐は先ほどのヤケクソじみた態度から変わって真剣な眼差しになり僕の瞳を見つめながら話し始めた。
「なぁに、大したことじゃないんだけどね。私の直感がこう言ってるんだよ。これは少年を守ってくれるってさ。」
「なんだそりゃ。発明家がそんな直感を言っていいのかよ。」
「発明家だからこそだよ。学者とかだったらなんかの根拠は必要だろうけど私は発明家。直感がモノを言う職業だろ?」
「お前が特殊すぎるだけな気もするけどな……」
「一言多いよ、少年。でもまぁ、一応毒素をバラまいてるんじゃないかと念のためにこのマシーンのバイオスキャナー使ってみたけど何にも反応はないし少なくとも地球上の毒とかそういうのはなかったからそれは安心していいよ。」
「だと良いんだけどね……取り敢えず御狐も腹減ったでしょ?なんか作るよ。」
「良いのかい?」
「体の異常はないからね。それに今日の晩飯担当僕だろ?」
「……ならお願いするよ。無茶だけはしないでくれよ?」
「わかってるって……うわっ!」
「どうした!?少年!?……なにこれ!?ブレスレットが!?」
僕らはそんな軽口を叩きあいながらこのブレスレットを調べるのを切り上げて、2人分の晩御飯を作ろうと立ち上がろうとした瞬間。ブレスレットが眩い光を放った。その光はまるで僕に呼びかけるように光っていて……
「弥!ねえ弥!しっかりして!」
恐らく僕は倒れたんだろう。御狐が焦りながら僕に呼びかけてる。でも何故だろう、その声がとても遠くに聞こえる……まるで僕の体はそのままに僕の心だけがどこか遠くに行くように……